アパレル業界全体に逆風が吹くなか、アパレルEC市場が拡大を続けていることは吉報と言えるでしょう。
そんな流れを味方につけるには、アパレルEC事業の現状を把握し、市場のトレンド、そして顧客の動向を正しく理解することからまずは始めましょう。
アパレルECの現状と課題について、来るべき未来の展望も視野に入れながら、説明していきます。
拡大するアパレルECの市場規模と課題
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年々増加傾向にあるアパレルEC利用者数
アパレルECの利用者数は年々増加傾向にあります。経済産業省によれば、物販系分野のうち、2014年の「衣類、服飾雑貨等」のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年比10.2%増の1兆2,822億円に到達。EC化率も全体の8.11%まで成長しています。
ファッションECが直面している課題
確実に広がりつつあるアパレルECの市場規模ですが、衣類を実店舗でしか購入しないという顧客が依然として顕著であるのも確かです。その多くがECで購入をためらう理由として、質感や着心地、試着によってサイズを確認することができない点や、デザインを見比べることができないので一緒に合わせるアイテムを同時に選びづらい点を挙げています。
さらなる成長のためにアパレルECに期待される今後の取り組み
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顧客がアパレルECの利用する上で足かせとなっているそうした問題をどう解決するかが急務となっています。最新の試みやサービスについて紹介しながら、アパレルECのさらなる発展への糸口を探って行くこととしましょう。
サイズ・マターズ!
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避けて通れないサイズの問題
多くの顧客がアパレルECの利用に前向きになれない最も大きな理由はサイズです。丁寧なサイズ表記を心がけたり、体型の異なったモデルに着用してもらうなど、各メーカーが様々な工夫を施しています。また、返品・交換の仕組みを整えるなど、サービス面で対応する方法も試されていますが、決定的な解決策には至っていません。そんななか、全くべつの角度からサイズの問題に取り組むサービスが登場しています。
例えば、「バーチャサイズ(Virtusize)」は、商品と手持ちの洋服とを顧客が比較することで、だいたいのサイズを測ることができるというもの。大手アパレルECサイトも導入に乗り出し、耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。こうしたフィッティングサービスは、顧客にメジャーで計測する手間を要求するなど、まだまだ黎明期にあると言えますが、顧客の満足度を上げて結果的に事業者に利する試みとして評価できます。
より充実したフィッティングサービスを
本来、既製服のサイズとは、例えば「S・M・L」という具合に、相対的なものです。これは、顧客が求める「最適のサイズ」が、着る人の好みや様々なメディア、さらには店舗スタッフなどとのコミュニケーションによって大きく左右されるものであり、必ずしも試着によって導かれるものではないことを示しています。
つまり、今ご紹介したような新しいサービスの導入もそうですが、各アパレルEC事業者の努力次第で、「最適のサイズ」は十分に提供が可能なはずです。顧客が納得のいく形でのフィッティングサービスが提供できれば、アパレルECの市場はますます大きく発展するでしょう。
コーディネート提案の新しい形
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コーディネートアプリとの連携
また顧客は、商品が自分に似合うのかどうか、またどんなアイテムと合わせたら良いのかというコーディネートへの不安を抱えてもいます。
実店舗のスタッフに代わって、ファッションECサイトが何らかの形で商品のコーディネート提案するする必要がありますが、今後はモデルが着用し、数点のコーディネートをディスプレイするだけでは少し物足りなさを感じます。
コーディネート提案の新しい形、例えば、「WEAR」や「iQON」といったコーディネートアプリとの連携をはかるのがよりスマートな方法といえるかもしれません。これらのサービスは、SNS的な要素をかなり含んでいるので、顧客の購買意欲をかきたてる「インフルエンサー」を囲い込むことにもつながります。
コンシェルジュ型サービスにも期待
また、「プリモード(PRIMODE)」などのようなスタイリストがコーディネートの助言してくれるサービスが台頭してきていますが、こうした例に倣って、リアルタイムで顧客の情報に応じて個別にコーディネートを提案するというやり方はも考えられるでしょう。
その場合、会員登録システムとの連携も必要になるはずですし、オウンドメディアの運用も視野に入れておかなくてはいけません。
スマートフォンを取りまくアパレルEC市場のトレンド
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広がるスマートフォン経由のEC利用
インターネット全般の傾向としてスマホの利用が拡大しており、ファッションECサイトでも、スマートフォンを経由した利用が目立ってきています。例えば、大手ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を擁する「スタートトゥデイ」の発表によれば、2014年の10月から12月の四半期において、全体の出荷のうち、57.9%がスマートフォン経由による取引であったとのこと。
また、「ファッションECサイト」をどのような端末を利用して閲覧しているかという調査でも、スマホを利用する時間が64%と、PCの36%を大きく上回るという結果も報告されています。
端末利用状況やライフスタイルを視野に入れたサービスを
スマートフォンを経由したアパレルEC利用者のうちの大半を占めているのが、PCは持たず、デバイスはスマートフォンのみという若年層の女性たちです。
アパレルECは、顧客の端末利用状況やライフスタイルを視野に入れながら、スマートフォンと親和性の高い各サービスとの連携を意識したマーケティングを模索する必要があります。
最新の市場動向に対応したマーケティングを
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重視すべきSNSとの連携
アパレルECを展開する上で、スマホ最適化が常識となっていることは言うまでもありませんが、さらに重視したいのがSNSとの連携です。自社アカウントを立ち上げることはもちろん、例えば、会員登録の際にfacebookアカウントを利用した「ソーシャルログイン」が可能なように整備することも検討する価値があるでしょう。
また「お気に入りに追加」を促す機能なども、地道ながらリピーター獲得には有用です。さらに事業の規模次第では、アプリの開発やキャリア決済、電子マネーへの対応も、スマートフォン経由のアパレルEC利用を想定マーケティングには欠かせないものとなるでしょう。
ターゲットに焦点を当てたきめ細かいサービスを
ただ、購買力のある中高年層の女性には引き続きPCサイトを利用する傾向があるのも事実です。その場合は、SNSを使ったマーケティングよりも、従来のようなメルマガなどEメールを利用した販促活動が有効となるでしょう。
競合する他社の動きも観察しながら、自社ECの方向性を見きわめ、ターゲットとなる年齢層や取り扱う商品に応じたより目配りの効いた対応が求められると言えるでしょう。
さいごに
アパレルECの現状と課題について、その解決に向けた取り組みについても絡めて探ってきました。
EC事業が拡大を続ける一方で、多難な状況が続くアパレル業界を生き抜くには、日々刻々と移り変わる市場のトレンドや顧客の関心に配慮したビジネス展開が不可欠です。
さまざまな変化にさらされるこの時期、従来にも増してスピード感覚をともなう臨機応変な姿勢がアパレルEC事業には求められています。