ファッションECサイトの運営については、トライアルアンドエラーを繰り返しながらよりよい形を模索するという考え方も一つですが、転ばぬ先の杖があるとするなら、使わない手はありません。
これからECサイトを立ち上げようという方にはもちろん、運営が今ひとつうまくいかないという方にも有用な、ファッションECの5つのタブーについてご紹介します。
不定期キャンペーンのやみくもな実施
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ECサイトが実施する、送料無料やポイント大幅還元といったキャンペーンは、単なる集客ではなく、優良顧客を獲得するためのものです。とくにECサイトを立ち上げた際の初回キャンペーンは、初めての顧客には効果が期待できますが、商品そのものに魅力がない限りリピーターとなることはありません。
とりわけ洋服のような趣味性の強い商品の場合、トライアル的な利用を促すことを念頭におきながら、素材や着心地・デザインなど、商品のセールスポイントにフォーカスし、明確にわかりやすく伝える必要があります。やみくもなキャンペーンは、やがて不毛な価格競争へと発展し、いずれ経営を圧迫してしまいかねません。くれぐれも注意が必要です。
またこれと似たキャンペーンとして、ユーザーレビューを書いてもらうかわりに送料を負担するなどのサービスがあります。ECサイトや商品の信用度を上げる方法としてもてはやされてきましたが、何らかの使役が生じてしまうことで、商品の印象に影響を与えかねません。最近では、心地よい買い物の妨げとなってしまうと忌避される傾向があります。
顧客データを欠いた状態でのEC運営
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大手ショッピングモールを利用したECでは、メールアドレスなどの顧客データの取得に制限が設けられることが多いですが、これはファッションEC運営にとって成長を妨げる大きな要因となります。
自社サイトでECを運営するブランドやメーカーであれば、メールマガジンさらには顧客ごとに最適化したレコメンドオファーなどの会員制度に伴うemailマーケティングの有用性をよくご存知のことでしょう。
こうしたサービスがかなりのリピート率を獲得することはよく知られるところです。さらに、オウンドメディアを活用した展開など、今後のファッションECを取り巻く環境は大きく様変わりしつつあり、ショッピングモールのみでの出店では大きなハンデを背負うことになりかねません。
ECならではのメリットを強化するには、自社サイトの構築、そして顧客データに基づいたマーケティングが欠かせないと言えるでしょう。
付加価値を感じさせないディスプレイ
画像引用元: Stylist
ファッションECでは、他サイトでも購入可能な商品を取り扱うことも多いでしょう。その場合、どこで誰が販売しようと、商品の価値自体に変わりはありませんが、だからと言ってディスプレイを工夫しなくてよいというわけではありません。むしろディスプレイに手を加え、他のサイトにはない付加価値を提供することがファッションECにとっては必須と言えるでしょう。
付加価値を感じさせるディスプレイとは、センスや感性に頼るものばかりではありません。例えば、洋服のディスプレイは、一般にモデル着用が良いとされることもありますが、実は必ずしもそうではありません。最近なら、Instagramを中心に流行している平置きコーディネートや、「IQON」のようなコーディネートアプリで見られるコーラージュ風コーディネートなど、洋服それ自体と同様、洋服をよく見せるディスプレイ方法にもトレンドがあるのです。
コーディネートや着こなしの提案は、ファッションECにとって、今後ますます重要になる一方です。洋服をより魅力的に見せるためには、トレンドの観察・リサーチに基づいた「正しい」アピール方法を模索し続けることが必要と言えるでしょう。
実店舗との連携の欠如
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実店舗の運営と並行してファッションECサイトを立ち上げることもあることでしょう。その場合、単にWeb上の店舗として位置づけ、独立して展開させるのは当世の時流とは合致しません。むしろ実店舗とできるだけ密に連携をとったECサイトの構築を目指すべきです。
例えば、店舗に欠品が出ている場合に顧客をECサイトにスムーズに移行できるよう、各店舗に試着品を充実させたり、徹底した在庫管理を行うなどの対応することで、売り逃がしを防ぐだけでなく、ファッションECあってこその、よりダイナミックな展開が可能になります。
また、実店舗で洋服を試着した上で、ECサイトを通じてより安く気軽に洋服を購入する、いわゆるショールーミングや、実店舗で洋服を購入するための事前準備にECサイトを利用する顧客への対応など、あらゆる販路を想定したオムニチャネル構想に基づくECサイト作りが目指されなくてはなりません。
ECサイトのUIの放置
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ファッションを取り扱う以上、ECサイトのUI(ユーザーインターフェース)にまるで変化がないのは大きな問題です。ECサイトにとってUIは店舗のありようを示していて、商品の入れ替えだけでなく、UIそのもの定期的に手を加えなければ、自ずと客足は減ってしまうものです。
大切なのは美しいデザインではなく、直感的な見やすさ、使い勝手の良さがあり、買い物がしやすいこと。UIには流行もあるので、時には定期的な経費の投入があっても良いですが、日頃からアクセス解析・データ分析を徹底し、流れが滞っている箇所の改善に取り組むだけでも大きな効果が期待できます。
さいごに
ECサイトを成功に導くには、少ない情報でどれだけ商品を効果的に見せるかが鍵となります。それには商品について最もよく知るブランドやメーカーの責任者による、ECサイト運営全般への積極的に参加が欠かせません。
ECサイト運営における当事者の不在は、ここでご紹介してきた、ファッションECにおけるタブーの殿をなすと言ってもよいでしょう。実店舗と全く同様、”優良なファッションECサイトとは、ブランドやメーカー責任者が中心となって、顧客の満足のために創意工夫を重ねるという地味な作業によってのみ成し遂げられるのです。”