#ファッション系ECサイトが参考にしたいファッションスナップサイト5選!
ファッション系ECサイトの役割は将来的に大きく変わろうとしています。コーディネートやスタイリングといったこれまで店舗が担ってきた役割をうまく引き継ぎつつ、購買者にとってさらに付加価値を提供することが求められます。人気を集めているファッションスナップサイトの長所・特徴をサーベイしながら、ファッション系ECサイトの未来形について考えます。
ファッション系ECサイトの現状
ファッション系ECサイトの売り上げが好調です。現状ではまだ洋服を店舗で購入する人の数が大半ですが、洋服をインターネットで購入する時代に確実に変容しつつあります。サイズ感や色合いのズレというリスクを払ってでも多くの人がECサイトで購入するのは、ただ時間がないという純粋に物理的な理由のほかに、誰にも邪魔されずリラックスした状態で服選びしたいという心理的な理由も大きいと言われます。
これはショップスタッフによるサーバント型の接客が形骸化し、営業行為としてしか見なされなくなっていることを示唆しています。同時に、洋服を購入する上で欠かせない要素と考えられてきた、サイズや色味だけでなく、生地感や着心地といった洋服にとって本質的な要素さえも重視されていないことがわかります。つまり洋服を購入する際に人々が大切にするのは、その洋服を着た時にどう見えるかという一点に尽きるということです。
だとすれば、これまでメーカー及び店舗が示してきた、コーディネートやスタイリングの模範を、今後はファッション系ECサイトが提案することを求められていることになります。他のサイトとおなじ商品を扱っていながら、着こなしの模範をどう示せるかによって、ファッション系ECサイトの売り上げは大きく左右されるわけです。
各ファッション系ECサイトは、返品・交換システムの整備や送料の負担など、サービス面での充実を図っています。そうした周辺的なことよりも、今後は洋服そのものへの付加価値、つまり誰でも扱える商品にもかかわらず、当該サイトで購入する方が価値があると思わせることに主眼を置く必要があります。
それは、売り手ではなく、洋服やファッションについて購買者よりも詳しい「インフルエンサー」としての立場を確保するということに他なりません。ファッション系ECサイトがそんな「インフルエンサー」となるために役に立つ、質の高いファッションスナップサイトをご紹介します。
The Sartorialist

まず最初にご紹介するのは、スコット・シューマン(Scott Schuman)というニューヨークの写真家によるファッションブログ「The Sartorialist」です。
ブログという形でファッションスナップを掲載するサイトの草分け的存在で(2005年開設)、おそらく現在最も支持者の多いファッションスナップサイトと言えるでしょう。
プロのカメラマンだけあって、被写体の表情が豊かなのが印象的ですが、このサイトで重要なのは「デザイナーが見るような目線で人々を捉えることで、服を着る人々にインスピレーションを与えるのが目的」というシューマンのモットーにあります。
芸術的なショットに見えるモノクロ写真も、写真そのものが美しいだけでなく、着る人のパーソナリティの一つとして洋服が捉えられているのがわかります。このサイトが洋服を良く見せることに長けているのは、シューマンがもともとメンズ・ファッションのディレクター、つまり洋服を売る立場にあったことと関係しているはずです。洋服を売るという視点から大いに参考になる、最重要ファッションスナップサイトと言えるでしょう。
Chictopia
「Chictopia」もアメリカ(サンフランシスコ)を拠点とするファッションサイトです。ユーザー登録すれば誰でも写真をアップできてSNS的な使い方をすることができるほか、お店まで開けるショップ機能まで付いているというもの。
2008年に開設され、現在は25万人以上のユーザーを抱え、一月のPVが1,300万回をこえるまでに成長しています。性別・エリア・ブランド・アイテム・シーン・スタイル・色別という具合に、詳細検索できるのが特徴。スナップで着用しているアイテムについて説明がきちんとされていることが多く、コメントも書き込めるようになっています。
ユーザーが自分の身体的特徴を書き込むことで、他の同じ体型の人と繋がれるというアイデアが秀逸です。「YouTube」や「Myspace」がそれぞれアマチュア映画作家やミュージシャンに果たしたのと同じ役割をこのサイトで果たしたいと考えているようで、『Nylon』など海外メディアでの評価も高く、将来性のあるサイトとみなされています。
優れたスナップを軸にして、アイテムやコーディネートについてユーザー同士がコミュニケーションをとるというアイデアは、ファッション系ECサイトにも有用でしょう。
The Locals

「The Locals」は、2007年に開設されたファッションスナップサイトで、ファッションウィークの季節にはドイツ版『VOGUE』のカメラマンを務めるデンマークのカメラマン、ゾーレン・イェプセン(Søren Jepsen)によって運営されています。
「どんな洋服であれ、人を鼓舞する人・ファッションをポートレートする」という目的のもと、世界の主要都市のストリートファッションを撮影しています。写真そのもののクオリティが高いのは言うまでもありませんが、このサイトが優れているのは、各写真に的確なタイトルが付けられていていたり、アイテム別にソートされていて、コーディネートの秀逸さが直感的に伝わってくるだけでなく、なぜその写真に好印象を抱くのか、見所がちゃんと分かるようにしてある点にあります。
そうした視点は、商業カメラマンがスナップを撮影・運営していることに大きく関係しているはずです。優れたスナップ写真を見て「素敵だな」と感じる人は多いですが、なぜそう感じるのか自分でもわかっていない人は少なくありません。
どんなアイテムをどのように使うことで好印象を与えるコーディネートができあがるかを伝えるのは、これからのファッション系ECサイトが担うべき役目。その意味でこのサイトは最良のスタートポイントを用意してくれているように思います。
Who What Wear

「Who What Wear」は、2006年の開設当時、ファッション記事を1日に1つ投稿するというシンプルなブログでしたが、現在はアメリカで最も有力なマルチメディブランドの一つにまで成長しました。
ファッションスナップサイトだけでなく、セレブリティやランウェイについてのニュースやコラムなど他のコンテンツも充実したファッション総合サイトです。
これからのファッションECサイトは、従来どおり洋服を売ることを主眼に置きながらも、様々なファッション関連の情報が閲覧・収集できてしかも商品が購入できるというような、いわゆる「オンラインファッションマガジン」として発展していくのが理想的だと思います。
情報を詰め込もうとすればするほど、サイトは煩雑になりがちですが、「Who What Wear」にはそうした印象がまるでなく、見やすくしかも直感的に操作しやすい、洗練された仕上がりです。
ファッションECサイトの中には、見栄えや賑やかさを重視するあまり、使いづらさを感じるものが少なくありません。専門家の知見を反映したより購買者に寄り添ったサイト構築が急務といえるでしょう。
Hel Looks

「Hel Looks」は、2005年に開設されたフィンランドのヘルシンキ発のファッションスナップサイト。このサイトの特筆すべき点は、これまで紹介してきたサイトと異なり、モデルやファッショニスタだけでなく、等身大の人々が被写体となっている点です。
美しい服をモデル体型の人が着て美しく見えるのは当然のことです。そうした写真は見ていて気持ちが良いですが、すべての閲覧者にとって高い有用性を発揮しているかどうかは別の話です。
オシャレではあるけれど、真似するのが難しかったり、普段着には向かないスタイリングが中心のファッションスナップサイトとは違う、「なんとか手が届きそうな」親和性がポイントです。だからと言って、いかにもデイリーユース的で退屈なコーディネートは見当たりません。
また、作られた風景ではなく、普段の生活をおくる日常的なストリートのなかに人も服も馴染んでいるのも好感が持てます。極めてバランスの良い「リアルクローズ」を体現しているサイトと言えるでしょう。
ほとんどの写真には被写体となる人のコメントが合わせて掲載されているのですが、性別・年齢を問わず、ヘルシンキの人々のファッションへの意識の高さに驚かされます。こうしたファッションへの考え方を啓蒙し、より成熟した洋服文化のための土壌を作るのも、これからのファッション系ECサイトに求められる仕事の一つです。その意味でも参考になるサイトだと思います。
まとめ
ファッション系ECサイトを利用する人の多くは、目下のところ、店舗で洋服を比較・確認した上で、より安価に手軽にファッション系ECサイトを利用する、いわゆる「ショールーミング」や、逆に店舗で洋服を買うための下調べとして使うのが主流となっています。
こうした流れは、拡張現実技術を活用した「バーチャル試着」などのサービスが本格的に開始されることで、大きく様変わりするはずです。そんな時代の到来に備えて、ファッション系ECサイトには、ここでご紹介してきたようなファッションスナップサイトが提供するような、極めて高い付加価値を伴う「インフルエンサー」として機能することが期待されています。